認定こども園化と幼児教育の無償化について
野あそび保育みっけは今年の4月から認定こども園として活動をスタートさせました。過去、認可外保育施設として民間事業所として独立採算で運営を長く行ってきた経験から安定的な運営や職員への身分保障の向上のために認可化を目指して3年ほど前から準備に入りました。国の保育や子育ての制度をいろいろ検討した結果として「地方裁量型認定こども園」への移行を決めました。
幼稚園や保育園への移行を考えなかった訳ではありませんが、幼稚園は学校法人、保育園は社会福祉法人でなければ認可園となれません。この法人格の取得はハードルが高く小規模な森のようちえんには不向きです。そうした中で「地方裁量型認定こども園の立ち上げには事業主体の法人を問わない」の一文があります。他の認定こども園は学校法人や社会福祉法人が要件になっていますが「地方裁量型認定こども園」に関しては何らかの法人格があれば良いとされています。多様な事業体が子育て支援、保育、幼児教育に参入出来るように、そして様々な利用者のニーズに応えられるようにするためと私は理解しています。ともかくも高いハードルがひとつ無い状態で認可化を進められるわけで「地方裁量型認定こども園」はどのような法人格で設置されていても他の認定こども園と同じ扱いで公的な支援を受けることができます。もともと森のようちえんのような小規模な活動体が認可化を目指すのには地方裁量型認定こども園が適していると思います。
しかしここに来て、幼児教育の無償化の動きが具体的になってきたことで、特に森のようちえんのような認可外保育事業(認可外保育施設としての届出もされていない保育事業)または認可外保育施設であっても保育を必要としない(保護者が就労等により保育を必要としている訳ではなく、自ら選んで森のようちえんに就園している場合)子どもについては無償化の対象から外れることがわかってきました。幼児教育の無償化の対象は幼稚園、保育園、認定こども園に通う3歳以上の子どもが対象になります。(保護者の負担する保育料等の金額に応じて全額が無償にならない場合もあります。)
森のようちえんに通っている子どもは3歳以上であっても無償化の対象から外れますので、保護者には変わらず保育料負担があることになります。そうした状況でどれだけの人が森のようちえんへの就園に踏み切るかはわかりません。他方の保育施設が無償で森のようちえんは数万円の保育料を負担するとなった場合、保育内容に大きな魅力を感じている人たちでも保育料負担の壁を乗り越えるのは難しいのではないかと思います。
これまで森のようちえんや自然保育の魅力を多くの人に語り、幼児教育としての野外での保育活動の意義を説明してきました。そしてここ10年で森のようちえんの数も増え、森のようちえんに通う子どもたちの数も増えました。確実に森のようちえんの社会化は進んできたと思っていた矢先に幼児教育の無償化の話が出てきて、森のようちえんにとって逆風となる状況が生まれようとしています。これまで多くの人たちが森のようちえんの社会化のために努力して来たことが脆くも崩れかけています。私としてもこの悔しさは計り知れない思いです。
前段で地方裁量型認定こども園について書いてきました。森のようちえんが無償化の対象から外れることが分かってから、地方裁量型認定こども園への移行についての問い合わせが急増しています。確かに無償化の対象になる認定こども園ではあります。しかし、認定こども園は基本的に子育て支援に重点を置いた施設であり、利用者のニーズに応える目的で作られるものです。これまでの森のようちえんが目指してきたものと異なる部分も少なくはありません。認定こども園について、森のようちえん事業者側の正しい理解が必要ですし、子どもの利益を保証するのはもちろんのこと、子育て中の保護者の利益も保証しなければなりません。これまで森のようちえんが行ってきた形がそのまま通用しないところもあるかと思います。森のようちえん事業者側の柔軟な対応が求められます。
しかし、野あそび保育みっけが認定こども園になったことで、実際の保育やその考えが大きく変わったことはありません。実際の運営上の手続きや事務処理は増えたことは確かです。これは対応出来ることですし、さしたる問題とは思ってはいません。施設拡充に関わる投資や資金確保、認可申請に関わる手続きや関係機関との調整や施設基準をカバーすること、職員の配置人数の確保等、たしかに認可外で行っていることとは比べものにならないくらいの量の作業がありますが、あくまで申請時のことです。みっけは無償化の話が出てくる以前から認可化を前提に準備をしてきましたので、さまざまな変化を緩やかに受けとめられていると思っています。他方、無償化の対応策として認可化に踏み切ろうとする場合、それを大きな変化と感じるのは当然なことかと思います。認可化を考えたとしても確実に認可されるかは地域の実情に寄るところがあり、全国どこでも確実に認可されるとは限りません。各園でさまざまに違ったハードルや超えなければならない課題はあるかと思います。
だいぶ長くなりましたが、興味関心がある方が多いのではないかと思って状況をお知らせさせて頂きました。
2018/07/31 内田幸一