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​公共の意識の芽生え

 今回は幼児期の子どもたちの素直な気持ちに働きかけた、公共の意識の芽生えについて話を進めようと思います。ここでも幼児の異年齢集団を基本に、問いかけ型の言葉掛けにより、子どもたちに向き合うことを基本にします。普段の集会的な時間を使って、特別なことにはならないように週に1~2回程度盛り込みます。時期は2学期に入ってからがいいでしょう。

たとえば問いかけの内容として、「みんなはここに大きい子と小さい
子がいることは分かっているね」「それでは質問するね」「大きくな
るってどういうこと?」などと問いかけます。子どもたちからいろい
ろな返答が返ってきます。どの答えにも「そうだね!!」「○○ちゃ
んは~~と思うんだね」と共感的な返答を返すようにします。

 子どもたちの集団からの返答を何通りも受けとめているうちに、集
団全体に情報が行き渡ります。何人かからの回答が同じ内容でもそう
でなくても、複数人からの発言を求めながら何度か質問を繰り返すことで集団内の共通理解が進みます。この手法は集団の情報共有と正答が同時に進みますので、異年齢の幼児であっても内容理解がその集団全体に行き渡る可能性は大きくなります。集団の中の発言が活発化しながら、子どもたちから出るさまざまな回答や返答はそれほど長い時間ではないうちに的を射た方向に集約されます。これは集団自体が内容にそった議論を行うと合意形成する性質によるもので、幼児の場合は彼らが正直で純真であるため、よりこのことが顕著に現れます。

 

 次に日を変えて新たな質問を子どもたちに投げかけます。例えば「小さな子が困っていたらどうする?」「泣いている子がいたらどうしてあげる?」など具体性をもたせた質問をします。そうすると再び子どもたちからさまざまな回答が出て来ます。「小さな子が困っていたら助けてあげる」「泣いていたらどうしたのって、聞いてあげる」など、年上の子たちからは的確な返答があると思います。子ども集団の輪の中でのこうしたやり取りは集団としての共通理解を広げるとともに内容的な合意形成を同時に進めることになります。子どもたちは自分たちの発言により、集団の中で守ることや行うべきことがあることに気づきはじめます。

 朝の集まり等の集会的な時間は、自分が所属する集団を意識する機会になること、その中で構成されるメンバーをしっかりと意識できる機会になること、異年齢の中での対応の違いを具体的に考える機会をもつことにつながり、一人ひとりがこの集団の中の一員であることや、集団が一人ひとりの繋がりとして関係性をもっていることに気づくようになります。さらにこのことは集団に対して公益的な繋がり(公共性)へ発展的に繋がる基礎的な意識形成としてとらえることができます。

 

 将来子どもたちが公共性を理解する際に、公共性は自分の外にあるも
のではなく、自分が所属する集団や社会の内側にあるものであると認識
するためには、自分が所属する集団に対しての公益的な繋がりを自らが
体験し、相互関係の中での協調や協同的な行動をもつ機会が必要です。
幼児期であっても自分が所属する集団へ意識を向けることや、その中で
協調的に自分の行動をどのように行うかなどは、保育者が適切な機会を
つくることで十分実現することができます。子どもたちが考え発言する
機会をつくり、そこから集団やその構成されるメンバーについても意識
し、全てのメンバーにとって公益的なことを決めたり行ったりすることを、幼児期の子どもたちも十分に行えることを理解しておきましょう。

2018/08/20

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