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保育者の関わり方

今回は『保育者の関わり方によって、幼児教育として子どもたちがどの方向に育っていくのか』についてです。

 

 まず私の分析ですが、これまでの一般的な保育現場や大人と幼児との関係での言葉かけで行われてきたことは「指示型の言葉かけ」が非常に多いように見受けられます。指示型の言葉かけとは言い方の強弱はありますが、ある方向性について子どもを大人の意図にしたがわせる言い方のことです。これに対して対比的に捉えられる言い方に「対話型の言葉かけ」があるかと思います。私の場合は同じようなニュアンスを含みますが、少し違って「問いかけ型の言葉かけ」と言っています。さらに「共感型の言葉かけ」を加えています。

 森のようちえんの活動の中に指示型の言葉かけが全くない訳ではあ
りませんが、これは極力少なくします。そして問いかけ型や共感型を
できるだけ多く使うようにします。幼児は従順で素直な性質を持って
いますから、指示型の言葉かけでも良く動きますし、そこに「褒め言
葉」など加えれば大人の思い通りに動かすことは可能です。大人の指
示に従って良く動ける子どもたちとして見えるでしょう。しかし、こ
れを繰り返して長い時間が過ぎたとしましょう。そうすると子どもた
ちに変化が生まれます。その変化は大人や保育者の指示を待つ姿として現れます。これは自分で考え、状況に応じた判断をして動く自立的な動きとは大きく異なったものです。できれば「内容を理解して指示されたことを的確にこなせること」と「状況に応じて自己判断で動くこと」の両方を行えるのが望ましいと私は思っています。そのためには対話型の言葉かけや問いかけ型、共感型の言葉かけを行い、その子自身が自ら考える機会を持つことがまず必要だと考えています。

 何を言われ何を問われ、それに対して何を答え、それにどう応じるのか、その子が行う機会や経験を積み重ねることが大切です。はじめから正しい動きや返答が返ってくるわけではない場合でも、繰り返し行われれば必ず的を射たものが返って来るようになります。年少児の頃から問いかけ型、共感型の言葉かけをすることで、自分の意志をはっきり伝えてきたり、自分の考えをまとめて発言したりするようになります。そしてこの問いかけ型、共感型の声がけを子ども間でも使うようになります。相手の意思を確認して、それにそった関わりを行う等、人間関係においても高度な対応を行うようになります。

 

 この問いかけ型、共感型の言葉かけを子どもたちの集団を対象に行う
ことでまた別の効果が生まれます。朝の会や帰りの会(終わりの会)な
ど、子どもたちが集まって集会的な時間を持つ機会に、このことを生か
します。たとえば子どもたちにある質問をします。質問の内容はなんで
も構いません。その子どもたちの話題に適したものならいいでしょう。
集団の中の誰かがこれに応えます。その答えが的確かそうでないかは問
題ありません。「○○ちゃんは~~なんだって。」「ほかには言える人
いる?」また誰か答えます。「△△くんはそうなんだ。」このように問いかけ型と共感型をを繰り返すことで、子どもたちは集団の中で問い掛けに応えること自体に慣れていきます。年齢の異なる子ども集団でも小さな子たちは大きな子たちの応える様子やその答えについて内容を理解し、やがてはこの集団的な問いかけの輪の中に参加するようになります。そして話題について来られるようになり、集団の一員としてその場を共有するようになります。

 

 また、朝の会の中で子どもたちのお名前呼びを行うとしましょう。そ
の際に大きな子たちに「誰がお休みか、あとで聞くね?」と問いかけを
しておきます。お名前呼びが終わって「誰がお休みか、分かる人いる
?」と質問をして手の上がった子を指名します。お休みの子の名前が次
々に答えられていきます。小さな子が手を上げて既に名前の上がった子
の名前を繰り返す場合もあります。その際も「○○ちゃんお休みだね」
と共感的な声がけをします。このお休みの子の名前を挙げさせる問いか
けは、自分たちの仲間を意識させる効果があります。お休みの子のことを思い浮かべることで、そこに出席している子だけでなく、その場にいない子を意識することが進みます。仲間を意識させることは自然発生的な流れの中ではばらつきが生まれます。あえてこうした機会をつくることで仲間の存在を意識化させます。日常の中で欠席の子も含め、自分たちの集団がどういった子たちで構成されているのかをとらえる機会を作っていきます。このことは仲間や友だちといった直接関わる存在だけではない、自分が所属する集団、特には意識していない子とも繋がる機会になります。集団やそこへの所属の意識を持つことは、建物に例えるなら基礎にあたります。その基礎の上にどんな建築物を建てるにしても基礎のないところには堅牢なものは作ることができません。思いやりや人に思いを馳せるといったことや、優しさや共感する気持ちなどをその後に育てたいと思っても、今日休んだ子のことすら意識したことのない子には高度すぎるとは思いませんか?

 

 幼児期からの習慣化は日常生活の中ではよく行われて来たことですが、自ら考えて自分なりの答えを導き出すことへの習慣化はそれほど意識されてこなかったように思います。発言をするにあたって、正しい答えが分からなければ答えない、という方向に持っていかないようにしたいものです。幼児期は正しい答えでなくても臆することなく発言する機会に恵まれれば、やがて正しい答えを導き出し思考自体の成長が伴ってきます。また、他者の存在に意識を向ける機会も増やすことで、人に対する思いやりや優しさなど、良質な感情形成の基礎となります。幼児期には子どもたちの純粋な思考や素直な感情をより発展させられるような関わりが、保育者には求められます。

2018/08/13

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